第47話 化学合成ワークショップ 前編

2019年1月20日 12:00 カテゴリ:兀天狗

ケツを叩かれ,いよいよ「兀天狗」の最終章に入ろうとしておりますが,

2017年の春に「化学合成ワークショップ」と「フィールドワーク in イギリス」がありましたので,

時間は前後しますが,そちらを先にお話ししようと思います.

さて,3月末の就職活動真っ只中に開催されたワークショップなのですが,

就職活動で,ちょうど関東に行っていたので,気分転換がてら参加しました(久しぶりに外の人にも会いたかったので).

この化学合成ワークショップは,定例ではなく,ジェンキンズ先生や佐藤さん,JAMSTECの渡部さんや静岡大の延原先生などが中心となって新たに企画されました.

確かに,日本にも化学合成生物を研究している方はたくさんいらっしゃいますが,

化学合成学会たるものが存在しておりません(学会が乱立すれば,その費用も馬鹿にならないのですが).

おそらく,JpGUのセッションくらいでしょうか.

私も化学合成の研究室に配属されながら,日本で化学合成生物を研究している研究者とお会いする機会が少なかったです(テーマが故に).

翌年度からジェンキンズ研に入る修士学生と博士学生が参加するとも聴いていたので楽しみです.

今回のワークショップは「東京大学 三崎臨海実験所」で開催されます.

就職活動及びアミノ酸分析に関する打ち合わせで千葉に来ていた私は,房総半島から三浦半島へフェリーで向かいました(久里浜・浜金谷線).

久里浜で先生と佐藤さんと合流し,三崎へ向かいました.

翌朝,フィールドワークのため,神奈川県の某所に集まりました(集合場所忘れた!!!)

化学合成の研究者や学生だけでなく,岩石学の方々も集まっております.

化学合成というと,どうしても生き物に焦点が当てられがちですが,その周辺環境の地質学や岩石学なども重要になってきます.

生態を研究していても,そのような知識が必要になる場面は多々あるでしょう.

似て非なる研究分野の人々が集まることで,お互いに新たな知見が得られますし,刺激にもなりますね.

さて,お互いの素性をあまり知らないまま,緊張感をもって,フィールドに向かいました.

午前中は天園と瀬上に行きました.

両方とも,化学合成生物の化石が産出する露頭です.

こちらの写真は瀬上の露頭になりますが,シロウリガイがうじゃうじゃいました.

「もしかしたらアミノ酸が残っているかもしれない」と期待しながら,いざサンプリングです.

DSCN9651.JPG

露頭の説明そっちのけで,化石発掘に集中したのを覚えています.

理由は忘れましたが,ちょっと手こずったような.

みんながそろそろ移動しようか~となっていたくらいに,ようやく1個体を採取することができました.

サンプリングしながら,落ちている破片を見てみると,(有機物の観点から)少し保存状態が良くないかもな~とは思っていましたが,

アミノ酸が出ないのであれば,それはそれで収穫です.

大学に帰ってからの仕事ができました.

横須賀では,蛇紋岩を見てきました.

DSCN9659.JPG「化学合成でなぜ蛇紋岩?」と思う方もいらっしゃると思いますので,ご紹介します(メモは研究室に置いてきたので,記憶を辿って.間違ってたら連絡ください).

そもそも「蛇紋岩」とは,マントル物質であるかんらん石と水が反応して生成される蛇紋石を主成分とする岩石のことです.

金沢大学の地球学コースを卒業するためには避けては通れない岩石です.

その蛇紋石を生成する反応の副産物として,磁鉄鉱と水素が生成されます.

この水素が鍵!!!

この水素が海水中の二酸化炭素(炭酸イオン?)と反応して,「メタン」を生成します.

メタンが生成されるということは?

もうおわかりですよね.

そのメタンを元にメタン酸化細菌によって,硫化水素が作られます.

そして,硫黄酸化細菌を共生するシロウリガイ達(化学合成生物)が集まってくるわけです.

実際に,大西洋中央海嶺の「Lost City Field」(名前超カッコイイ)やマリアナ海溝の「Shinkai Seep Field」では,蛇紋岩化作用がトリガーとなって,化学合成生物(シロウリガイ)が見つかっています(海上保安庁の小原さん談).

このようにして,無機的に生じる蛇紋岩化作用が結果として,生命の宿り木となります.

私は,この岩石学と化学合成がつながったことにとても感動しました.

科学はつながっているんだ(僕らはいつも以心伝心)と.

とはいえ,フィールドで蛇紋岩を見ても,あまり化石の匂いはありません.

午前中のフィールドに比べ,古生物組の学生に温度差がありました(笑)

なかなか実感するのは難しいですが,生命の起源の可能性もありますからね.これからの研究の発展に期待大です.

初日のフィールドワークを終え,明日は研究発表会です.

久々の発表にワクワクします.

まだ,私の発表を聴いていただいていない方ばかりでしたので,どのような意見が出るか,楽しみであります.

※露頭についての詳細を知りたい方は,ジェンキンズ先生にお尋ねください.

ーーーーーーーーーーー今日から使える英語表現ーーーーーーーーーーーー

run in the family 「~は家系である」

Namihei' hair runs in the family.