第20話 JAMSTEC修行の旅 その4

2018年5月27日 12:00 カテゴリ:兀橋のアミノ酸分析奮闘記

さて、いよいよ「陽イオン交換クロマトカラムを用いた夾雑物の除去」の工程に入ります。

そもそも、なぜ夾雑物を除去しなければならないのか。

夾雑物が残っていると誘導体化試薬と反応してしまい、アミノ酸が上手く誘導体化できなくなってしまうからです。要は、お邪魔虫さんです。手法についての詳細はTakano et al. (2010)をご覧ください。

筋肉のアミノ酸を抽出することに対し、殻のアミノ酸を抽出するためにはさらに手間がかかります。いや、しかし、さすがJAMSTEC、いろんな器材がどんどんでてきます。

佐々木さんの真似をして、作業を進めていくのは私。実験の感覚を覚えるのは私。

この"感覚"はしっかり身につけようと、実験を進めていきます。

私「こんな手法を思いつくってすごいですね。」

ロ「ほんとだよね~。同じ研究者といえど、化学の人の頭って、古生物の人と全然違うよね。」

前処理の原理に感動するジェンキンズ研一同。

実験の待ち時間に、金沢大学の同位体分析装置の改良をどんな流れで進めていくか話し合います。

前日に引き続き、異国の言葉の羅列。

でも、昨日よりはわかっているような気がしていました。

ただ、金沢大学の装置の話になったら、またわからなくなりましたね。

ちゃんと理解できた言葉は、「セラミック管は折れやすいということ」、「グラファイトフェラル」、「今晩飲みに行くか」くらいですかね(記憶が定かではありませんが)。

その晩、力石さん達と盃を交わします。

この頃は、緊張して力石さんの話の笑いどころがわからず、戸惑っていましたね(笑)。2年後にはわかるようになっているので、安心してと言いたいですね。

出張に行って楽しいことのひとつに、普段会えない、いろんな人とお酒を飲めることがあります(飲まなくてもいい)。

人と会うことで、いろんな価値観に触れ合い、刺激をもらえます。ジェンキンズ研に入ると、その機会がたくさんあります(しかもみなさん、めちゃくちゃいい人!!)ので、積極的に参加することをお勧めします。

翌朝、誘導体化の続きを行い、オートサンプラ―にセットします。

ジェンキンズ先生はここで帰還。いつも大事なところを見逃してしまうのが先生らしいところです。後藤さんとふたりで続きの作業を行います。

実は、ちょっと癪に触るようなことがあり、この日の私の後藤さんに対する態度はひどかったのです(特にお昼ご飯)。今思うと、本当に申し訳なく、反省しています。

すみませんでした!!!!!!!

せっかくJAMSTECにまで来ているのだから、もっと議論すべきだったのに、感情が態度に出てしまうのはどうにかしなければ(こどもですね)。

今は、全く、微塵もそんな態度にならないので、理由は飲みに行ったときにでも聴いてください。

さて、試料のアミノ酸の組成と濃度のデータが出ました。

アミノ酸は検出されたのですが、今回利用した殻試料からは、栄養段階の推定に必要なアミノ酸がほとんど含まれてはいなかったのです。

がびーーーーん。お先真っ暗。

かと、思いましたが、これがまたおもしろいことで、殻によってアミノ酸の組成が異なるんですね(詳細はKobayashi and Samata, 2006)。だから、栄養段階の推定に必要なアミノ酸がある試料ならば使えると、しかも××××××××(ここから先は秘密です)。

この結果によって、研究の方針ががっちり定まりました。

そこで、

力石さん「栄養段階は推定できないけど、同位体比は測定する?」

うーん、栄養段階が推定できないんじゃ意味ないのかな~と思いましたが、

後藤さん「やろうよ!!!!こんなチャンス無駄にできないよ」

何かの役に立つ可能性があるかもしれませんし、やれるチャンスをいただけるならやっておこう。

この同位体比の測定も2年後に役立つことになろうとは...

マシンタイムの都合で、誘導体化した試料をすぐには同位体比を測定できませんでしたが、力石さんのご厚意で、後日やっていただけることになりました。

また、最終日の帰りに、当時D1の学生さんから、進学を選んだ理由と、実際に進んでみて感じたことについて、お話を伺いました。金沢大学ではDに進学する人が少なく、「なぜ進学を選んだのか」というリアルな(より直近の)意見を中々聴けませんでした。私からすると、先生方は、研究者として成功した人(というと語弊があるかもしれません)であり、ポジティブな面しか見えていませんし、ドクターの生の声を聴きたかったのです。

ま、だからといって就職すれば「安定」できる、とは限りませんし、就職してからわかることもあるのです~。

彼女には、研究だけでなく人としての尊敬の念を抱きながら、同じくアミノ酸研究1年生ということで、対象は違えど、勝手に親近感を持っていました(笑)。

負けないように頑張ろうと思い、「生命の星・地球博物館」に向けて、横須賀を発ちました。

JAMSTECの旅を通して、力石さん達と時間を共にしたことで、進学60、就職40といった"あんばい"でしょうかね。出張に行くと、毎回研究っていいなって思います(夏の北海道は除く)。

力石さんにこれだけご教授いただけるなんて、どれだけ幸せなことで、その技術や恵まれた環境を捨ててまで就職して良かったのかと悩むのは、これまた2年後の話。

----------------------------Reference-----------------------------------

Takano, Y., Kashiyama, Y., Ogawa, N. O., Chikaraishi, Y., & Ohkouchi, N. (2010). Isolation and desalting with cation‐exchange chromatography for compound‐specific nitrogen isotope analysis of amino acids: application to biogeochemical samples. Rapid Communications in Mass Spectrometry, 24 (16), 2317-2323.

Kobayashi, I., & Samata, T. (2006). Bivalve shell structure and organic matrix. Materials Science and Engineering: C, 26(4), 692-698.