第70話 国立科学博物館

2019年6月23日 12:00 カテゴリ:兀天狗

修論・卒論が終わり,大学に来る人も減っていきます.

卒業旅行に行ったり,帰省したり,就活の準備したりで,研究している学生は少ないですね.

私は,残された時間で,できるかぎり研究に携わっていたい(てか働かずにもっとやりたいな)と思い,

データを整理したり,分析のお手伝いをしておりました.

「遊びに行く友達もいないの!?」と茶化されたりもしました.

否定はできませんが,研究室という空間が好きだったので.

さて,古生物学会で声をかけていただいた加瀬先生と連絡を取り合い,

国立科学博物館に行く日程が決まりました.

ジェンキンズ先生と共に,つくばへ向かいます.

現地では,芳賀さんが対応してくださいました.

芳賀さんは現生と化石の軟体動物を研究されています.

さて,加瀬先生,芳賀さんとともに,国立科学博物館の標本庫に向かいました.

扉を開けて,最初に目に飛び込んできたのは,

きれいに整理された(並べられた)標本庫です.

うちの標本庫のように,標本(モロブタ)が散乱していることはほとんどありませんでした.

なんと美しいことでしょう.

しかも,棚を開けると,その中も種ごとに整理されている棚が多く,とても見やすかったです.

当時のジェンキンズ研は,かちゃかちゃ人間しかいないので,

研究室はいつもかちゃかちゃでした(笑).

今回,加瀬先生から提示していただいた標本は白亜紀のものでした.

標本を見た瞬間に,白亜紀化石とは思えない保存状態で感動しました.

しっかり殻体が残っていますし,これは期待大です.

以前,カイムさんからお借りしたジュラ紀の標本は表面はきれいでしたが,

断面が再結晶していました.

今回の標本も同じように断面は再結晶したり,溶解したりしていないか心配です.

一刻も早く,電子顕微鏡で観察したいです.

白亜紀試料からアミノ酸を抽出できるかが私の中で大きな目標でした.

もちろん,まずは新生代の化石で続成の問題をクリアしていくべきだと思いますが,

やはり,6600万年の壁は越えたかったです.

また,白亜紀試料だけでなく,中新世(だったかな?)の試料も見せていただきました.

研究室所有の現生種と近縁の種も多く,食性も多様でした.

彼らの食物網を復元できたら,なんともおもしろいことでしょうね.

それにしても,どの棚を開けても,おもしろい標本がたくさんありました.

直径1mくらいのアンモナイトもありました.

少なくとも1週間くらいは過ごせそうです.

芳賀さんにもフナクイムシの標本を見せていただいたり,

懇切丁寧に説明してくださいました.

加瀬先生,芳賀さん,重田さん,ありがとうございました.

とても有意義な時間を過ごせました.

科博で議論していて感じたことが,

生物を会話上に出すときに和名でなく種名で話していたことです.

大学にいると,基本は和名を使って話します.

学生にもわかりやすく,身近な表現ではあります.

しかし,日本以外の人には,伝わりませんし,論文で使うのは種名です.

そういった点からも,科博では普段から種名を使っているそうです.

ほかにも専門用語はそのまま英語で話されることが多かったです.

一概にそれが良いとは言えませんが,

少なくとも話し手の頭の中には,どんどん英語がインプットされやすいと思います.

だから,会話は(適切な表現かわかりませんが)ルー大柴みたいな感じでした.

私はそういうのが好きなので,どんどんやっていきたいですが,

会話上に英単語を入れることを嫌う人もいるので,日常会話では多用すべきでないかもしれませんね.

日本語には日本語の,英語には英語のニュアンスがあるので適切な言語力を習得したいです.

金沢に帰還し,すぐに微細構造を観察しました.

そしてアミノ酸も抽出して,ガスクロで分析しました.

その結果は,秘密です.