第4話 アミノ酸プロジェクトの幕開け ~巨匠との出会い~

2018年3月20日 20:27 カテゴリ:兀橋のアミノ酸分析奮闘記

4月、金沢では桜が満開です。

4年生に上がり、本格的に研究が始まりました。

まずは、研究の方針をかためていきます。

基本的には、指導教員との相談の下、研究方針を固めていきますが、

指導教員はアミノ酸の知識をほとんど持ち合わせていなかったので、

アミノ酸の窒素同位体比を用いた栄養段階推定手法を開発したJAMSTECの力石嘉人氏(現 北海道大学低温研究所)と、有孔虫の研究者の土屋正史氏と打ち合わせしていただけることになりました。

春に開通したばかりの北陸新幹線に乗って、JAMSTECのある追浜に向かいます。

新幹線が開通するまでは、石川県から東京は、とても遠かったのです。

21年とちょっと、東京(関東)にほぼ一度も行ったことのなかった私からすると、関東はテレビでのイメージしかなく、本当に存在する都市なのか半信半疑でした(存在しないわけはない)。

「東京駅は実在するんだ」と感じた(当たり前です)私は、先生とともに、電車とバスを乗り継ぎ、JAMSTECに到着しました。

正門をくぐり、JAMSTECの敷地内に入ります。

右も左もわからないまま、先生のうしろについていき、力石さんの居室に向かいます。

「失礼します」

力石さんの居室の扉を開き、力石さんとご対面です!

思わず、「本物の力石さんだ!!!!!」と感動しました。

そのときの、感情の高ぶりとしては、化石を発掘したときよりも、大きかったのではないでしょうか。

土屋さん(ほかにも何名もいらっしゃいます)もアミノ酸論文の共著にも入っているので、アミノ酸研究が進めてきた研究者達が目の前にいるというのも、不思議な感覚で、ふわふわしていました(プロ野球選手に会うような気分でしたね)。

私の研究テーマの相談とはいえ、ペーペーの私では、話がなかなか進まないので、先生が研究概要を説明します。

その説明を聞いた力石さんが一言、

力石さん「化石じゃ厳しいんじゃないかなあ

(うそーん!先生から聞いていた話と違うぞ!!)

この「化石に応用することは厳しい」という言葉の真意を、当時の私は"ちゃんと"わかっていませんでした。

化石の中に残っているアミノ酸は、続成作用により変質し、本来の組成を保っておらず、

同位体分別も起こってしまうので、その値を出したとしても、栄養段階推定の等式に適用できるかというのは別の話です。

当時の私と先生の考え方では、それっぽい栄養段階になれば、それで良いと思っていたのですが、それは「サイエンス」ではありません。

「サイエンス」とは、予想した結果を出すことではなく、なぜそうなったのかを考えることです。難しいところではありますが、研究のおもしろいところでもあります(私はこれのおもしろさに気付いたのが、M2の11月~12月くらいでした笑)。

結局は、現生でまだまだ発展途上の手法(適用できない生き物もいる)を、いきなり化石を応用する前に、続成作用によるアミノ酸の窒素同位体比の影響がどうなるのかを検討しなければならないという結論に落ち着きました。

我々の考えの脆いところを徹底的に、 洗い出す力石さんと土屋さん。

でも、このような、研究方針の弱点を把握しておくというのは非常に大事です。

力石さんと土屋さんによって、このことの重要性を再認識することができました。

では、どのようにして検討をしていくべきなのでしょうか?

1つは、試薬実験を通して、同位体比や組成の変化を見る手法です。

ひとつひとつの化学反応によって、何が起きているかを考えるためには重要な研究です。

もうひとつは、天然試料を利用して(命は大切に!)、そこで何が起きているか考える研究です。

私と指導教員の考え(ジェンキンズ研の傾向)として、「天然をやりたい」という希望(モチベーション)があるので、後者を採用しました。

その結果を基に、今後の方針を考えていけばいいと思っていました。

さて、天然試料を利用して、種々の検討を行っていくためには、「これは絶対にそうだ」という基準が必要になります。

そこで、我々が(というか先行研究で)注目したのが「植物食動物」です。

植物食動物ならば、推定される栄養段階が2.0と期待できるので、それを基に議論をすることができます。

力石さんの本音と建前が全く分からないほど緊張していましたが、無事に研究の方向性が定まってきました。

(研究の詳細については、割愛いたします)

帰りのバスや電車の中で、先生と打ち合わせの復習と今後の展望について、ひたすら話しました。

JAMSTECでのレベルや考え方の違いに刺激を受けに受けまくった私は、希望と野心に満ち溢れて、金沢に帰還です。

いよいよ、研究生活が始まります。

この研究に立ちはだかる怒涛の壁が待っているとも知らずに、、、、