第61話 1秒で9万円がなくなった

2019年4月21日 12:00 カテゴリ:兀天狗

電気炉が納品され,本格的に装置の改良が始まりました.

還元炉を組み込む前に,しばらく交換していなかった酸化炉のセラミック管を新品のものに交換します.

還元炉以外のラインはリークもない状態で,還元炉の調整を行うためです.

同時に,すべてのラインをチェックするのは難しいので,ひとつずつ順番につないでいきます.

セラミック管の交換は,一度,後藤さんが作業しているのを見学したことがありましたが,

自分の手で交換したことはありませんでした.

「せっかくだからやってみなよ」

後藤さんからチャンスをいただき,トライします.

かねてより,多くの人から,「セラミック管はとても折れやすいので,力をかけすぎないように」と

耳にタコやらイカやらができるくらい口酸っぱく注意を受けてきました.

"折れやすい"ということは理解していましたが,私の理解度は甘かったです.

緊張した手つきで酸化炉にセラミック管を入れて,キャピラリーカラムを繋いだナットを締めていきます.

「緩いとリークするけど,締めすぎたら折れるから気をつけてね」と言われたながら,ゆっくり締めていきます.

何が難しいかというと,チビモンキーで締める接続部が宙に浮いており,力の入れ具合がわかりにくいのです.

あんまり上手く回らんな~と思って,少し力を入れると,

「パキッ」という乾いた音と共に,私の手が軽くなりました.

うしろで先生方も「あっ・・・」とざわつき始めます.

あれ?これやっちゃった?

恐る恐るセラミック管に目をやると,

きれいに折れていました.

折ってしまったという手の感覚は視覚によって明確に脳まで伝わり,認識しました.

あ..9万円さようなら..

「すみません.9万円を1秒で失いました」

失意の元,先生に謝罪すると,

「これで,どのくらい力を入れると折れるかわかったでしょ?」と前向きなコメント.

「まあ,みんな1回くらいは折っちゃうよ」と後藤さんもフォローしてくださりました.

申し訳ない気持ちで一杯でしたが,先生方のお言葉を聞いて,やってしまったことは仕方がない!と切り替えます.

(しばらくはセラミック管に触るのも恐れ多かったですが)

まあ,1回もやったことがないことを成功させられるほうがすごいと前向きに考え(←無責任),

次回のチャンスに備えます.

次のセラミック管を折ってしまったら,在庫も底をつきてしまうので,ゴッドハンド後藤さんにお力添えしていただきます.

スムーズに交換を終えた後藤さんの手つきを見て,どのくらいの経験値があればここまでたどり着けるのだろうかを疑問を持ちました.

私も機械のメンテナンスがスムーズにできるように経験を積みたいものです.

セラミック管を交換して,酸化炉の調整に入っていきます.