A new Miocene whale-fall community dominated by bathymodiolin mussel Adipicola from Hobetsu area, Hokkaido, Japan

2017年6月29日 16:00 カテゴリ:Article

  

Jenkins, R. G., Kaim, A., Amano, K., Sakurai, K. and Matsubara, K. (2018 )  Paleontological Research . vol.22 (2) pp.105-111.  Link

概要

日本で4例目となる化石鯨骨群集を発見しました.

北海道の穂別地域に分布する中新世の地層から発見された鯨骨化石(むかわ町立穂別博物館収蔵)に多数の二枚貝化石が付着していました.

その二枚貝を調べてみるとほとんどすべてAdipicolaという属の二枚貝であることがわかりました.Adipicola属の二枚貝はイガイ科(ムール貝なども含む二枚貝の一群)の仲間で,その中でもメタン湧水に生息するシンカイヒバリガイ類の親戚で,現生でも鯨骨や沈木から発見されています.イオウ酸化細菌を共生していることが知られ,他のイガイ科二枚貝同様,足糸と呼ばれる糸を足からだして,その糸で何かに固着して生息しています.

今回発見した化石Adipicolaはまさに鯨骨に密着しており,鯨骨にひっついたまま化石化したことがうかがえます.同時代のイタリアでもAdipicolaが密集した鯨骨が発見されているのですが,それと同様のものが日本にもあったことがわかりました.中新世は海底表面に生息している化学合成二枚貝類の分布が凡世界的になった時代ですが,今回の発見は北西太平洋域における彼らの分布を確定的にしました.

ちなみに,今回試料として利用した鯨骨化石はもともと博物館の展示室で展示されていた標本です.それを私と,共同研究者のカイム博士(ポーランド古生物学研究所)が博物館で見学しているときにたまたま見つけて研究することになりました.

もしかすると皆さんがよく行く博物館に展示されているクジラ化石にも鯨骨群集がついているかもしれません.よく見てみてください.